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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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しまった、母の日をすっかり失念してました。
ギリギリですけども素敵な作品を拝見して、ぐわっとテンションあがったので、勢いで小話投下してしまいました。
なんだか感動を台無しにするようなもので申し訳ないのですが…。

もう傷一行はファミリーでいいよ。みんなひっくるめて大好きだ。
 

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何かを作り出すということは、何も錬金術に限ったことではなくとも容易でないことを痛感した4人の男たちは、人口密度のためにいつもより格段に熱気のこもったキッチンでの作業に多かれ少なかれ疲労していた。
日ごろ食事の用意全般を任せている彼らの仲間の偉業を、たったいま身をもって知ったところである。
今日は、その仲間のためにと菓子作りに挑んだ4人だったが、経験者皆無という状態で始まった無謀なる挑戦は、当然の事ながら行き詰まりを見せていた。

「だーかーらっ、使ったもんはその都度仕舞えって言っただろう」
鼻の下に髭を生やした男が、両手を広げて辺り一帯を示しながらわめき散らしている。
確かに男がそういうのも無理はない程にキッチンの状況たるや惨憺たるものだった。
調理器具は無造作に転がり、食料と思しき物の残骸があちこちに散乱している。
「そんな偉そうに言うんだったらお前がやればいいだろ」
「そうだ、さっきからなんにもしてねーじゃないか!」
眼鏡をかけた男が憤然と抗議し、ドレッドヘアの男がそれに便乗する。
「何いってんだ、お前らみたいな烏合の衆、私の他に誰が纏めるっていうんだよ!」
言われた髭の男が猛然と反撃する。
「だいたい私以外手順も何も分かっちゃいないじゃないか!」
未だ釈然としない様子の大男ふたりを持ち場につかせた髭の男が視線をめぐらせると、先ほどからひとり黙々と仕事をこなしていた褐色の肌の男が、ボールを手にしたまま動きを止めている。
何かに気づいたらしい髭の男が慌てて駆け寄った。
「旦那っ、そいつはそんなに力を入れなくても割れる…って、ああっ全部殻ごと握りつぶしてらっしゃるーー!」
「なんだこの脆弱な食材は」
「逆ギレせんで下さい…あーあ、卵がないとどうにもならんよなぁ」
悪びれもなく返されて、声をかけた男が額を押さえて嘆息していると廊下につながるドアが開き、お団子頭の少女が顔を覗かせた。
「お花渡してきましタ!そちらは準備大丈夫ですカ?」
少女の問いに、髭の男が仏頂面で部屋の中を顎でしゃくって見せた。
「見てのとおりの有様だよ。全くこいつ等の使えないことといったら」
「お前が言うな!」
「そうだ何にもしてないくせに!」
「……」
直後に襲い掛かる反論と、無言の抗議。
それらを耳にし、周囲を一通り見渡した少女は一向に捗っていないという現状を把握したようだ。
「もう、殿方って仕様がないですネ」
肩に乗った彼女の親友である白黒の猫らしき動物に小さく話しかけると、そのまま調理台の前に陣取った。
「卵は私が錬丹術で何とかしますから、お二人はトッピングの果物用意してくださイ。ヨキさんはこれを泡立てて貰えますカ?」
少女の流れるような的確な指示に、止まっていた作業を再開する男たち。
ひとり未だボールを抱えたまま手持ち無沙汰の男の前に立った少女は、その手から砕けた卵の残骸もろともすべてを受け取るとにっこりと笑いかけた。
「貴方は、あの方のところに行ってあげて下さイ」
「しかし…」
「準備が終わるまで引き止めていてほしいので、どうかお願いしまス」
「…判った」
詰め寄らんばかりの迫力の少女の依頼に、最初難色を示した男も了承する。
そうして後ろ髪を引かれた様子で立ち去る男を部屋に残った4人と一匹が見送った。



「…うん、これはさっきあの子に貰ったものだよ。カーネーションという花でね、異郷の地ではこれを母親に感謝をこめて渡す習慣があるらしい。もっとも私は母親だなんて似ても似つかないけれども」
場所を移してリビングでは、自らの手で花瓶に生けたそれを慈しむように眺めながら、相貌に柔和なしわを刻んだ男が今しがた到着した褐色の男に説明をしている最中だった。
「でも、私は本当に幸せ者だと思うよ。こんな…」
ガシャン
男の言葉をさえぎって少し離れた部屋から乾いた破壊音が響く。続いて口々に言い合う声も届いてきた。
『おわーっ、誰だよ床に空き袋放置してるの!転んだじゃないか』
『お前が足元見てないから悪いんだろ!』
『あーあー。皿、割っちまった』
『直しますから破片には触らないでくださイ』
『皿の心配の前に誰か私を気遣ってよ!』
「…全く、騒々しいな」
秘密裏にという任務の条件も忘れたかのように無遠慮に響く声に、足止めの任を負った男が眉を寄せてため息をついた。もう一方の男は、どうやら今の騒音でおおよその事情を知ってしまったらしく、くすくすと肩を震わせて笑っていたが、ようやく笑いを納めて再び言葉を続ける。
「――こんなにすばらしい仲間にめぐり合えたのだからね」
ありがとう、その一言をかみ締める様に口にして男は静かに頭を下げた。
「礼など言われるようなことは…」
「この巡り会わせをくれたのは、他でもない君だから。感謝してる」
それは、穏やかなしかし迷いのない響きを含んでいた。
その声を受けた男が、意を決したように頭を上げた男に向き直る。
「     」
大切なものをひとつずつ取り出すかのように告げられた五文字の音の羅列は、大きな感情の波となって相手の心に届いた。



いつしかキッチンの中は甘い香りが充満していた。
製作物の首尾を確認した髭の男が、胸をそらせる。
「よし、完璧だ。皆の者、私を敬え称えろ」
「皆で作ったものですから、お一人の手柄みたいに言うのはどうかと思いまス」
少女にぴしゃりと言い切られ、ぐうの音も出ない姿を他の二人が楽しそうに笑っている。
場の空気を換えるべく咳払いした男は、主賓の様子を伺うための斥候を募ったが、結局、少女を除く男3人による壮絶なるジャンケン勝負の末、彼自身がその役を担うことになっていた。
(なんかまたやな予感がするんだよな…)と内心で一人ごちながらも任務を遂行すべく、彼がいると思しき部屋を覗き込む。目に入ってきた光景は、まさにふたり分の人影がひとつに合わさるところだった。
「……」
そっと足音を忍ばせ、そのままキッチンに戻った自称司令塔は、待っていた仲間にきっぱりと号令した。
「とりあえず、あと5分だけ待機」
「「「了解!」」」
奇しくも三つの声が重なった。
それは本日、初めて彼の意見が受け入れられた瞬間だった。




傷一行のママを皆でお祝いするの巻。
ちなみに作ってたのはスポンジケーキじゃなくてホットケーキを積み重ねてデコレーションした感じの簡易的なものです、製作時間の都合上。
あの人の言葉は、お好きな五文字を入れてみてください。
以上、お粗末さまでございました。

 

 
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