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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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なんかタイミングも何もあったものじゃないのですが、FA小話上げてみました。
しかも全然七夕ネタじゃないのですが…。
誰でもよかったといえばそうなんだけど、各方面からの影響でジェルソさん視点です。
学園設定…というかその番外編みたいななんかおかしなノリですが、よろしかったら追記からどうぞ。
 

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休日の昼間だというのにあいにくの雨模様。
出かけるあてもない野郎3人が、部屋の中にたむろして管を巻いている。折りたたみテーブルに凭れ掛かってワンカップをちびちびとやっている髭の男と、新聞片手に時折ビールをあおっている眼鏡の男と。そして、手持ち無沙汰に窓の外を眺めてはつまみを漁っている自分も生憎しっかりその一員だった。
むさくるしい連中と顔つき合わせて酒盛りなんぞ碌でもないとぼやく髭の男に、だったら帰れと突き放した。
そもそも、いきなり人の家に押し掛けてきたのは彼らなのだ。まぁ、ある程度の酒とつまみは持参していたからそれについての文句はないのだが。
一喝された男は、私だって好き来たんじゃない。あいつが呼びに付けたから仕方なく来てやったんだ、とかなんとか反論していたが、言い返すのも次第に億劫になったのだろう、結局うやむやのままお互い口を噤むこととなった。
じめじめとうっとおしい所にこう、辛気臭い顔を突き合わせているという現状は、それほどまでに気力が削がれるものなのだ。
気の利いた彼女やらともに過ごす家族やらがあれば、なにも男3人でこんな狭いアパートに集う必要もないのだから、まぁ自業自得といえないこともない。全くもって不本意極まりない話だ。
「なんかこう、ぱーっと気持ちが晴れるものないのかよ」
先ほどの悶着もどこ吹く風、ひとり新しい缶を物色している元凶というべき眼鏡の男に話を振った。
レンズの奥から此方を一瞥した男は、「無い」とたった二文字の素っ気無い言葉を返してきたが、此方のあからさまな不満が顔に出ていたのだろう、それならば仕方なさそうに手を打って、一言。「お前何かしゃべれ」とあまりにも横暴な要求が下される。
「はぁ!?何で俺が」
「言いだしっぺだろうが。とりあえず、方向付けはしてやった。後は責任もって盛り上げるんだな」
どう考えても、無茶振りである。
窓の外は相変わらずの雨模様。当分晴れ間は見えそうにない。きっと明日も、その次の日も。

「…そういえばさ、この間の休みの日」
ふと、思い出したことがあった。自分が抱いた疑問を彼らは解決してくれるだろうかと、少し興がのっただけなのだが。
居合わせた二人の視線がこちらに注がれるのを感じながら、話を続けた。


---


浅い水槽を隔てた向こう側で楽しげに行き交う人をぼんやりと見送る。
中には声を張り上げて客寄せに精を出す同業者もいるが、店番の身である自分にはそんな気は毛頭なかった。
時折、水の中を覗き込んでは足を止める客に、代金と金魚すくいに使用する道具(ポイいうらしい)を交換することに終始していた。
そもそも、祭りなんていうものは参加するから楽しいのであって、勤労しながら遠巻きに浮かれた輩を目にするのは、むしろ苦痛でしかない。浴衣姿のお姉ちゃんは、多少…否かなり目の保養にはなったりしたのだが。
ぼんやりと、そんなとりとめのないことを考えながら見るとはなしに人の流れを目で追っていると、
「すまないが、ひとつもらえないかな?」
不意に頭上から穏やかな声が降ってきた。
見上げると、初老の人の良さそうな男が硬貨を手にたたずんでいた。そしてその横には、目つきの鋭い大柄の男が立っている。
闇の中、めいめいに深い色合いの浴衣を身に包んだ二人の男は、親子というにはあまりにも似ていないように思えた。かといって、友人というには歳が離れすぎている。自分にも一回り以上年齢の違う飲み仲間はいるが、不思議とそういう風にも見えないのだ。
さらに彼らのまとう雰囲気も全く対照的で、いったい何がこの二人をむすびつけているのやら、皆目見当がつかないと、それが彼らに対する印象だった。
とはいえ初対面の、しかも単なる金魚すくい屋の店番である自分が、客である当人たちにその関係を問うなどという不躾な事が出来ようはずも無く、とりあえず差し障りのない程度に観察することで、自己解決してみることにした。

ポイを手にした年嵩の男が、浴衣の裾が地面に摩れないように気遣いながら、注意深く腰を降ろした。
あらかじめ狙いを定めていたのだろう、動きを追い始めた先には客寄せ用のひときわ大きな金魚がいた。
集客目的というだけあって、そいつ掬うのは至難の業だろう。
「ほら、あの金魚。目が赤いだろう?アルビノといってとても珍しいんだよ」
目的の魚を手前にと誘導しながらも、連れの男に律儀に説明している。言われた男は黙って指し示された水面に視線を送っている。
「なんだか、君に似ていると思ったんだ…」
獲物に挑みかかるというよりは、穏やかな見守るような視線を注ぎながら小さく漏らされた一言は、本来なら喧騒にさえぎられて、水槽を隔てた此方には届かなかっただろう。
彼らにとっても、そして自分にとってもの不幸は、奇しくもその瞬間に呼応するかのように周囲の声が途切れたせいであろう。
その不可思議な発言をした男の慈しむような眼差しと、その言葉を受けた男の静かなそれでいて揺るぎのない佇まいに、何故だか分からないが胸が苦しくなる気がした。
それは、不快感などでは決してなく、むしろ真綿でしめつけられるような、どこか甘い疼きに似た感情を自分の中に残していった。

やがて、水中の奇妙な追いかけっこは当初の目算どおり、人間側の敗北で幕を下ろす。
名残惜しげに背中越しに金魚を見送る姿に、えもいわれぬ罪悪感めいた感情が去来していった。
とはいえ、こればかりはどうすることも出来ない。縁日の遊戯といえども、そのあたりはシビアなのだ。絆されるわけにはいかないと自らに言い聞かせる。
「店主」
突然低い声が、響き目の前に硬貨が突きつけられる。
今まで黙って静観していた若い男が目の前に立っていた。
「店主じゃなくて、単なる店番だけどな。はい毎度」
そう、注釈を添えつつ代金を受け取り、引き換えに新しいポイを手渡す。
その大きな体を縮めるようにして、水槽の前にしゃがみ込んだ男は、その強い眼光で連れの男が逃した水槽の主を見つめている。
梁に吊るされた電灯の光が、そんな彼の姿を柔らかに浮かび上がらせていた。
淡い光を受けたその瞳は、見事な紅色をしており、先ほどの初老の男がアルビノの金魚をして彼に似ていると評した理由を、そのとき初めて悟ることが出来た。
人の手による交配をもってしてもその存在が稀な赤目の魚。いわんや人間をや。
いつの間にか、もう一人の男も戻ってきて、その隣に寄り添うように腰を落とし、見守っている。まるでそうするのが当たり前であるかのように。
このふたりが歩んできたであろう数奇な人生をなんとなく推し量れそうな気がした。その不思議な絆の強さについても。
再び、水槽に目を移すと一転して緊迫した空気が流れていた。
狙い定めた獲物の一挙手一投足すらも見逃すまいという気迫が、水面を通して此方にも伝わってくるかのようだ。
勝負は一瞬、しかもたった一度のみ。それで片がつくだろうと、そう思った。

いつしか、小さなテントをぐるりと半円で囲うようにして人だかりが出来ていた。
行き交う喧騒の中に「兄ちゃんがんばれよ」という激励の声も混じる。
見ず知らずの人間同士が水面での一人と一匹の駆け引きを見守っている。全くもって不思議な光景だった。
やがて男はその静かなる戦いを制し、目的の獲物を椀の中におさめることに成功した。
にわかに沸き起こる拍手。
その中心で初めて自らの置かれた状況を知り、驚いたように目を瞬かせる男と、傍らで眩しげにその姿を見上げる男がいる。
ようやく掬いおおせた椀の中の魚を受け取りビニール袋に移し、手渡そうとしたその時、わずかばかりの逡巡が生じた。
もういちど手元に戻し、ビニールの袋をあけると、網でさらにもう一匹、金魚を掬い揚げその中に泳がせる。
黒地に白い模様の混じるそれは、通称パンダと呼ばれるものだ。赤目程とはいわないまでもこれも目玉商品といえばそうなのだが、迷いはなかった。
「客寄せに協力してくれた礼だよ。もって行ってくれ」
ちょうどお似合いだろうと付け足すと、初老の男がはにかむように笑い、それからありがとうと頭を下げた。
青年のほうも黙って会釈する。

人ごみに紛れるほんの一瞬前、去り行く二人の手が重なったように見えたのは果たして錯覚だったのだろうか。
思考をめぐらせる暇も与えられずに、先ほどの青年と金魚の格闘を見に集まった者たちが口々にポイを求めてくる。
彼らを捌き終えて顔を上げたときには、すでにあの二人の姿は見えなくなってしまっていた。

本当に不思議な二人だったと思う。そして、あれほど心が温まるような、それでいて胸が締め付けられるような関係にはいまだかつて出会ったことがないように思った。
程なくして店主が戻ってきては、店の売りと言うべき金魚がそろって姿を消したことに嘆いていたが、気に留めることはなかった。


---


「…で?」
眼鏡の縁を持ち上げながら、友人のひとりが不信感をあらわにした視線を投げかけた。
「だから、俺の話はこれで終わりだって」
「散々引っ張っておいて、結局、何も分からないという、それが落ちなのか」
呆れたように大きなため息をついている。
「俺は、お前らの意見を聞きたくて話したんだよ。なぁ、どう思う?」
「尋常じゃない。それ以上は聞くだけ野暮ってもんだろう」
きっぱりと簡潔に私見を述べた後、確かに気になるという気持ちも分からないではないと、珍しく婉曲した言葉を返してきた。
「お前はどう思う?」
もう一人の、テーブルに噛り付いている側に目を向けると、いつの間にやら壁際まで飛びさすった相手は、なぜか必死に首を左右に振っていた。
「私はその二人のことなんぞ、全くこれっぽっちも知らないからな!」
必死で言い募る姿に、疑惑をこめた視線を送る。
傍らで、眼鏡ごしに人の悪い笑みを浮かべた男が指を鳴らして見せた。
「今飲んだものを吐くか、洗いざらい隠してることを吐くかどちらか選ばせてやるぞ」
その声を合図に、逃げる友人を追求するべく腰を上げる。

男3人の不毛な追いかけっこはそれからひとしきり続いた。




何故学園ネタかというと、ここのよきさんが密かに用務員さん設定だからという。あと、合成獣さんたちとは昔の仕事仲間とかそんな感じです。別にそこから広がる何かがあるわけじゃないですが。
七夕が終わってから取り掛かって、仕上げたら梅雨も明けてたとか、もうね…。

 

 
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