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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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ものの見事に間に合わなかったけれど、しれっと上げてみますクリスマス小話です。とはいえ、全然それらしくないんですけど。
ちなみにはがねの学園ネタなので、大丈夫な方は追記からどうぞ…。 

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金髪の少年が、天井に何かをつるそうと必死に伸び上がっている。
色とりどりのリボンやリースで飾り付けられた部屋の片隅で格闘しているその姿を、もうひとり部屋にいた黒髪の少年が怪訝そうに見上げた。
「さっきから何やってるの?」
自身はすでに持ち場の装飾を終え、外装の類を片している所だった。作業の手を止めたのは、飾り付けにと用意したものの中には見覚えのない、不思議な球体が見えたからである。
必然的に焦点は天井付近に向いており、なおかつ相手の状況自体を一切関知していない彼には、友人の不安定な足場に注意が及ぶべくもない。留め具の外れかかった脚立は接地部分でカタカタとしきりに不穏な音を奏でていたのだが…。
ようやく天井に緑色の球体を設置し終えた金髪の少年がひと心地ついた瞬間、遂に足場にしていた脚立がぐらりと大きく傾いだ。
「おわーっ!」とどこか間の抜けた叫びを上げながら、小さな体が床へと接近する最中、その様子を眺めていたもうひとりの少年は、咄嗟の判断ですかさずその進路にあったツリーを抱えると脇に身を移動させる。
鉢を抱えるその背中で、脚立の倒れる乾いた音と次いで鈍い音が響く。それは目視しなくても上に乗っていた人間の尻餅だろうと推し量ることは、その場に居合わせた者ならば容易だっただろう。
「てめー、普通そこは支えるとかするだろ!」
床に転がった少年は、どうやら落下のダメージは然程でもなかったらしく、即座に起き上がりまくし立てている。
「何言ってるの。被害を最小限に抑えようと、こうやってツリーを避難させたんじゃないか」
「オレの身体って一番どうでもいいものなのかよ!」
説明すればさらに白熱した尋問が返ってくる。きらびやかな電飾の施されたモミの木を元に位置に戻しながら、黒髪の少年はその剣幕にたじろぐことなく、大きく息をついた。
「頑丈な君のことだから、大したことないだろうって思ったんだよ。実際無事だったんだしいいじゃないか」
「それは結果論で…」
「それよりさ、あれは何なの?少なくとも僕の家にはなかった筈だけど」
更に言い募ろうとする相手を制し、先ほどからなおざりになっていた問いかけを繰り返す。彼の視線は天井からつるされた、緑色のどうやら植物らしいオブジェに向けられていた。
強引に言葉を遮られ憤然とした様子の少年も、話題が彼の取り付けたそれに移ると、一転して上機嫌になる。そして、得意気に胸を反らせると、一言「キッシングボール」と告げた。
「…って何なのさ?」
答えが明確な解答になっていないことに眉をひそめ、言葉じりを拾って、もったいぶった態度の相手に投げかける。
「詳しくは知らないけど、どこかの神話が由来らしくてな」と前置きした上で、やっと語りだしたその内容は、要約するとそのボールの下にいる人間には問答無用でキス出来るという便利アイテムだということだった。
「これさえあれば、教頭先生を誘導して、こうばーんっと!」
心底楽しそうに身振り手振りを交えて語る金髪の少年を、黒髪の少年は冷めた目で見返した。
「君さ…、これってどう考えてもアイツにおいしいところ攫われるフラグじゃないか」
「フラグとか言うな!その点は大丈夫だぜ。さっき教頭先生から連絡あってさ、あいつ急に抜けられないバイト入ったとかで、今日は来られないんだってよ」
「それ本当なの?」
なぜその連絡が教頭先生発信なのかと果てしない疑問が少年の頭を掠めたが、問題はそこじゃないとばかりにそれを押しとどめて、再度相手の発言を確認する。
そしてその問いかけに自信満々で胸を張って頷く友人を、初めて頼もしいと思った。
「だったらさ、この下にもテーブル置いてさ」
「おう、取り皿とか載せといたら必然的にこっちに来てくれるよな」
少年たちの夢と希望に満ちた謀略が、明るく飾り付けられた室内で繰り広げられてゆく。

「遅くなってごめん。思いの外手間取ってしまって」
声と共に現れたのは、人の良さそうな初老の男だった。その両手にはタッパの類いが大量にぶら下げられている。
申し訳無さげに頭を下げるその姿を見るや、少年たちは一気に駆け寄り、その手の荷物を奪い取らんばかりの勢いで受け取った。
「教頭先生ごめんなさい。こんなに沢山の荷物だなんて僕、気づかなくて…」
大変だったでしょと黒髪の少年が労れば、もう一人の少年がその手に触れ驚愕の声を上げた。
「先生、手めちゃくちゃ冷えてるじゃないか!しかも真っ赤だし」
そのまま包み込むように触れようとするのを、いち早く察知した黒髪の少年が、その背中を肘で小突いて牽制した。
誤魔化し笑いを浮かべた金髪の少年はおもむろに手にした容器を覗き込み、続いて感嘆の声を上げる。
「すげー、こんなに美味そうな料理初めてだ。ありがとうな先生!」
めいめいに手にした荷物をキッチンへと運びこんでゆくその姿を、空いた手でマフラーを解きながら暖かな視線で男が見送った。
その後、黒髪の少年は椅子を手に戻ってくると、脇にあるテーブルの前に置く。
「教頭先生、疲れたでしょ?盛り付けは僕らでやるからしばらくここで休んでてよ」
その様子を目にしたもう一方の少年もそれがいいと即座に賛同し、逡巡する様子の男の手を引き、セットされた椅子のほうへといざなう。
不思議と彼らの目はこれ以上ないというほどに期待に満ちていた。
そのえもいわれぬ迫力に気圧されたのか、最初は戸惑う様子を見せていた男も「それじゃ、少しだけお言葉に甘えようかな」と柔らかい笑みを浮かべて勧めに応じた。
椅子の前に立ち、伸びをするように一度腰を伸ばす。
「あ…!」
とその時、何かに気づいたのか不意に声を上げた。その視線の先には件の緑の球体がぶら下がっている。
「宿り木のオーナメントとは珍しいね」
少年たちの肩がびくりと揺れた。
「この下を通ると女神様がキスをくれるという逸話があってね、そこから、クリスマスに宿木の下にいる女性には接吻してもいい、なんていうロマンチックな習慣が出来たらしいんだ。もっとも残念ながらここには女神様も女の子もいないけれども」
茶目っ気を含んだ口調で笑う男の姿を目にした少年たちが、それと分かるくらいはっきりと肩を落とした。
彼らの耳に響いたのは、何かがへし折れる音だったのか、はたまた砕け散る音だったのかは定かではないが、ただひとつ確かなことはふたりの口から一様に盛大なるため息が漏れたという事実だった。


---

「はぁー…」
男の吐いた息は、白い帯となって空気中を長く尾を引いて流れていった。
繁華街からは幾分離れたこの建設現場でさえも、時折浮かれた人間が通り過ぎる。しかも、やたらと男女の二人連れを見かけるのだった。普段は夜ともなるとほぼ皆無だというのに、である。
いつもは気にも留めないそんな些細なことが癇に障るのは、おそらくこの日が所謂どこぞの誰かさんの生誕前日という祭りであるかららしい。
「何が悲しくて、こんな日にまで勤労しなきゃならんかね」
ため息だけでは飽き足らないのか、聞こえよがしにそう不満を口にした。
「しょうがねーだろ。年内になんとかモノにしろって、お達しだからな」
本日の急な勤務を言い渡した上司は、そんな恨み言もどこ吹く風であっけらかんと言い放った。
「元はといえばアンタが、寒いだの何だのって勝手に休むからでしょうが」
まったく悪びれる様子のない相手に、いまだ承服できないのか、男はさらに言い募る。
上司を相手にするには、いささか不遜すぎる物言いではあったが、言われた男のほうは特にそれに対して気分を害する様子を微塵も見せない。
「部下の体調を考慮しての英断だっての」などと嘯くと、吹き抜ける風にファーつきのジャケットに首をすくませ、そのままどこぞへとふらりと姿を消してしまった。

置いてゆかれる形になった男が、消化できずに燻った不平を再びため息に変えていると、その背中を小突く者がいた。
「あーもう、さっきから辛気臭いったら。あんたそもそも、今晩の予定も何もないんでしょ?」
混ぜ返すように茶々を入れたのは、この現場内の紅一点だった。厚ぼったい魅惑的な唇を尖らせて、同僚をたしなめる様子はどこか楽しげにみえる。
言葉は辛らつであったが、それを口にした相手も、言われた方にも遺恨を残すようなものはない。こういったじゃれ合いにも似たやりとりは、彼らの中では日常茶飯事であるようだった。
「…まぁ確かに予定は無かったけどよ」
歯切れ悪く答える男は、戯言とはいえ言い負かされっぱなしは癪に障るのか、矛先を女のほうに向けてきた。
「そういうお前さんも、ここにいるって事は予定が無かったってことだよな?」
「おあいにく様。あたしは相方がこっちに出るって言うから付き合ってるだけ。あんたと一緒にしないで」
そう答えながら意味ありげな視線を少し離れた場所で作業をしている長髪巨躯の男の方に流す。視線の先の男はそれにはまったく気付いていないらしく黙々と自らの責務に励んでいた。
果たして彼らに意思の疎通はあるものかと、二人を無比べつつそんな疑問を浮かべた男だったが、目の前の同僚の幸福を優先すべく、その指摘を差し控えた。
「とにかくさ、さっさと片付けちゃって、煩いお偉いさんたちを黙らせちゃいましょ」
「…そうだな。何か話してるうちに愚痴いってるのが馬鹿らしくなってきたぜ」
男がようやく矛を収めたその時、
「こら、お前たちいつまで休憩しているんだ。さっきからアルバイトの坊主が一人でずっと作業しているぞ」
不意に静かな、しかし有無を言わせぬ力強い声が振ってきた。いつの間にこちらに気づいたのか先ほどの話題の主である巨躯の男がすぐ横に立っていた。
「今から戻るところだったの」
「そうそう、ほんの一瞬前だけどな」
女の言葉に注釈した男が、わき腹に肘鉄を食らっている。
いってーなとこぼしながら顔を上げると、件のアルバイトが脇目も振らずに作業をしている姿が見えた。
年齢的には少年といって差し支えないのだろうが、その堂々たる体躯や、落ち着いた――というより寧ろ古臭い言動はどうにも、そう括ってしまうには抵抗が生じる程だった。話しかけるときもどうしても見上げる形になってしまうため、なんとなくどちらが先輩なんだか混乱してしまいそうにもなる。
とはいえそんな彼も、普段は学ランなぞを着て登校する、れっきとした高校生なのだ。
「…そういえば、アイツ今日大丈夫だったのかな?」
不意に浮かんだ疑問を口にすると、そばにいた同僚二人も一様に首をかしげた。
「見舞いに来てくれるような、気の利いた子はいるけどなぁ」
「「「え?」」」
突然の出来事に、話の内容以前に驚愕のあまり反応できない3人を尻目に、手にしたビニール袋を持ち上げて「俺様サンタからの差し入れ」とかおどけているのは、先ほどから姿を消していた彼らの上司だった。
彼は男に袋を預け、ひとり作業を続けているアルバイトにもこっちへ来いと呼び寄せている。
本人前にしての追求は不味いよなぁとぼんやり思いをめぐらせながら、上司から受け取った袋の中身をおもむろに検めた。
「なんで缶しるこなんですか!?」
「うるせー奴だな。未成年がいるから酒ってわけはいかねーだろーが」
「いやでも、そこはコーヒーとかいろいろチョイスってものが…」
「俺様のしるこが飲めないっていうのかよ!」
「ちょ、横暴だ」
上司と部下のやり取りをほかの二人と呼ばれて今しがた輪に加わったアルバイトが見守っている。
「いい?ああいう馬鹿な大人を見習っちゃダメよ」
女の忠告にひとつ頷いた「少年」は、その手に缶のしるこを受け取った。
「そこのお二人さん、もう気が済んだ?」
他愛ない応酬を終えた二人にも、いつの間にか同じように缶を手にしている。
「おーし、そんじゃ乾杯といくか」
監督の男が高く缶を持ち上げると、他の者もそれに倣った。
「今日はお疲れさん。乾杯!」
唱和する声と同時に一斉に5つの缶が合わさった。
次いでプルタブをあげる小気味よい音が、星空の下に響いた。


---

プシュっと軽い音とともに泡がこぼれ出す。慌ててそれを口で掬い上げると舌を炭酸の刺激と苦味が通過していった。
一気に飲み下したかったものはビールだったか、それともこのむさ苦しい惨状なのか。
「今夜もこの面子なんだよな」
夕刻から始まった男3人による不毛な宴は、いまやたけなわを越え、おのおのがつぶれるのを待つばかりとなっていた。現にドレッドの男はすでにまどろみ始めている。
ちびちびと缶をあおる口髭の男の呟きを聞きとがめたらしい眼鏡の男が、「一人で飲むよりはいくらかましだろう」と返した。
しかし、そうは言われても素直に納得できないのは、どう考えてもこの状況が実りあるものとは思えないからであろう。
飲み捨てられた空き缶が散らばる部屋に、大の男が三者三様に管を巻いている。その姿を見るにるつけ、まるで鏡に出も映し出されているかのような錯覚に陥り、ますます気が滅入ってくるのだ。
それでも、なんだかんだといいながらつるんでのは、やはり一人でいるよりは同じ境遇の者たちと杯を重ねるほうがいいと、心のどこかで思っているのかもしれない。
だからきっと、またこうやって馬鹿な集まりを続けていくのだろうとそう思った。
「…ん?」
そこで、はたと我に返る。
「だから、このままじゃ駄目だっての!」
突然の大音声に残りの二人が何事かとばかりに視線を投げてくる。
無言の問いかけには答えずに、淀んだ空気を振り払うべく髭の男は立ち上がり、勇み足でバルコニーへと出て行った。

屋外に出ると冷えた空気が肌を刺す。身震いしながらも、手にした缶ビールを呷ることは忘れない。
そうして、視界に入る澄んだ星空を眺めていると、寒空の下の酒盛りもおつなものだと思えてくるから不思議だ。
少なくとも、辛気臭い連中と同じ空気を吸うよりはずっとマシだろうと。
ふと気まぐれに眼下に視線を移してみると、閑静な町並みが広がっている。
さすがに出歩くものもいないだろうと多寡をくくっていると、真下の街灯の辺りで低い話し声が聞こえてきた。
何気なくそちらを凝視した男は、次の瞬間己の浅はかな行動を激しく後悔することになる。
彼の目に映ったのは、淡い街灯の光と、そして二つの人影だった。


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電灯の作りだす昼白色のソフトフォーカスの中で、求める姿を見出した初老の男が安堵の吐息をついた。
「良かった、すれ違いにならなくて」
どうやら、生徒たちとの宴を終えた後、この場で待ち人を探していたようだ。
彼の目の前に現れたのは、アルバイト先から戻る最中の大柄の男だった。
意外な姿を目にし、珍しくその相貌に驚きの色が浮かんでいる。…といっても傍目にはそれほどの動揺は見て取れなかったのだが。
「…何時からここに居た?」
短い問いかけは、この場に留まっていた男の身を案じてのものだった。
「それ程でもないよ。帰る時、ちょうど君の仕事が終わるころかなと思って、少し回り道してきただけだから」
事も無げにそう言う男は、言葉に反して寒さで鼻の頭を真っ赤にしている。
そっとその髪に手を伸ばした大柄の男は、冷え切ったそれが物語る時間の経過を推し量り、わずかに眉根を寄せた。
寄り道というには、この場所は、男が出向いたところから随分と離れている。ましてや徒歩で両手に荷物を抱えた状態であればなおさらだろう。
「風邪でも引いたらどうする」
「ごめん、でも今日中にこれを届けたくてね…」
そう答えて手にした荷物を胸の前まで持ち上げる。
「今日のパーティーの料理、君の分も作ったから」
それから、と言い足してもうひとつ紙袋を取り出した。
「私からのクリスマスプレゼント。気に入ってもらえるか分からないけれど…」
僅かに目を伏せ、手にした袋を差し出す。
受け取った男が中身を見ると、それはマフラーだった。
取り出して、何もなかった首元に巻きつける。色味こそ違うが、目の前の男がしているそれとよく似たものだった。淡い色調を折り重ねたその模様は、身につけた男の褐色の肌を見事に引き立てている。
男の口から低く小さく漏らされた謝辞は、静かな世界の中でちゃんと目指す相手に届いたようだ。良かったと、ほっと胸をなでおろしてる。その様子を見つめながら、じわりと首元から広がるぬくもりは、眼前で面映い笑顔を見せるこの男のようだと、そう思った。
「先生」
呼べば、柔らかな視線が向けられる。
今日のこの日に送りたいものを用意したのは、何も彼だけではなかった。
大きな体を折り曲げて、鞄を物色する男が中から小さな包みを取り出した。
クリスマスの装飾も何もない、素っ気無いクラフト紙の中から出てきたのは、二つ指の手袋だった。
瞬間、目を見張る先生と呼ばれた初老の男の手をとって、恭しくそそれを両の手に嵌める。
淡い光の下で行われるそれは、まるで神聖な儀式のようですらあった。
「ありがとう。最高の贈り物だよ」
包み込まれた両手を見つめ、それから送り主を見上げた男がそう言った。
ならば良かったと、短く答える男が手にした荷物ごとその身体を引き寄せる。
照らし出す街灯のさらのその上で軽くサッシの閉まる音が響いたが、彼らの耳に届くことはなかったようだ。
寄り添う二つの影が、その後しばらくの間路傍に伸びていた。







ロマンチックが定石の聖夜に、盛大なるアンチテーゼを謳ってみた…つもりは無いのですが、書いてる人の残念ぶりがにじみ出たものと思われます。
なんにせよここまで読んでいただき本当にお疲れ様でございました。
なお、傷医者以外のゲストの方々は次のとおりです。
冒頭:えどと嫉妬、二つ目:初代強欲と悪魔の巣の皆さん、三つ目:よきさんと合成獣さん。
趣味に走りすぎたと猛省している次第です…。

 

 
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