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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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唐突におとうさまとどくたーで中央地下のお話。微妙に暴力的な描写あり。
ただひたすらドクターがいろんな意味で可哀想なだけの話ですので、いつものあほなノリと趣きが異なりますのでどうかご注意願います。
こういうのって制限かけたほうがいいのかすごく悩みますね。まぁ、私が書くものなので相当ぬるいですが。
 

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一条の日の光すら差し込むことのない閉塞された空間にその男は独りで座していた。否、正確には数体の異形と生活を共にしていた。
窓はなく、分厚い鉄製の扉のみが外界へと通じる個所ではあったが、その道のりは煩雑かつ苦難に満ちていた。
そして、この場に佇んだままの男にはその扉を開こうとする意志すらも見受けられはしなかった。
簡素というよりは殺風景と評するべき室内にはベッドとテーブルのみが設えられており、卓の上には食事が乗せられていたが、その彩り豊かな料理が暗い空気と相まって、滑稽なほどに違和感を発している。
運び込まれてずいぶん時間が経過しているであろうその食料は冷め切っていたが、しかしどの皿にも手が付けられた形跡はなかった。
時折響く獣の咆哮と男のかすかな呼吸のみが支配する閉じられた世界。篭った陰鬱なる空気は永遠のものと思われたが、それは突如として破られることになる。
この場に踏み込む別の存在が現れたのである。

軋みもなく開いた扉は、一瞬その姿が掻き消えたかのような錯覚を男に起こさせた。次の瞬間目の前に姿を現したのは、この地下の世界を支配する「父」と呼ばれる老人だった。
監禁された男の世話は、老人の年若い息子の一人がすべて引き受けていた。
そのため男が捕えられた際に中央の広間のような場所でまみえて以来、一度もこの老人と相対することはなかった。それだけに、不意のこの来訪者の意図を測る男の心中には穏やかならざるものが渦巻いていた。
男がこの場に留められた理由は、彼らの計画――おそらくこの国の人間を蹂躙するものと推測される、その実行のための人身御供だった。だとすると、主自らが出向いた理由は自明ではないかと。
それでも、男は身動き一つとることは出来なかった。空腹故ではない。もっと深いところでその魂は絶望の淵に居たからである。
突如として、空間に現れ場の空気を支配せんかという威圧を放つ老人は、そんな男の憔悴した姿を別段何の感慨もなく見下ろした。
「…ふむ」
無造作に老いた腕が伸ばされ、その指先が虚空を弾く動作をする。すると、寝台の上で俯いた姿勢で座した男の頭が後方へと勢いよく傾ぎ、寝台に強かに打ち付けられた。
それと同時に、室内にいた合成獣の一体が、獣の骨格からさらなる異形へと変態してゆく。それが枝分かれした触覚器官を多数有する軟体生物へと変貌を遂げるにはそれ程の時間はかからなかった。
更にその生物は、床に絖った痕を残しながら着実に男のいるベッドの方へと移動していった。
後方に倒された衝撃で、軽い脳震盪を起こし意識を混濁させた男の両の手は、やすやすと異形に確保されることとなる。
天井を仰ぐ格好で寝台に縫い止められ、さらけ出されたその双眸は、驚愕の中に恐怖と絶望とが綯交ぜになった暗い色合いを帯びていた。
「…私、に、扉を開けさせるつもり、か…?」
仰臥した姿勢からなんとか半身を起こそうと身を捩る合間、男はやっとのことで口を開いた。
老齢の男はその姿に冷ややかな視線を注いでいる。
「今のおまえに如何で扉など開けられようか」
ぽつりと落とされた言葉に、問いかけた男の身じろぎが止まった。
「なっ…」
「善人の仮面を被ったところで、内面は空虚のままなのだろう。身を賭して救いたい唯の一人さえ見いだせず何をほざくか」
「…ぐ、ぅ…」
言葉を失う男への戒めは執拗に、そして圧迫を伴ったものへと変わり始める。最初は頭上へと腕を固定するにとどまっていたそれが、無防備な半身にぬめりを伴って絡みついていた。
「何故、研究所から去った?おまえ一人が居なければ計画は頓挫するとでも信じたか?あの場に残された部下の処遇は考えなかったか?」
長く伸びた複数の器官たちは、肺や胃の腑を着実に圧迫してゆく。
「逃亡した村で、滅びの可能性に気づきながら目の前の日常にしがみついていたのだろう。懇意にした村人たちも共に散るならば良しとしたのか?」
極端に抑揚の抑えられた声は淡々としかし確実に男の耳を犯してゆく。振り払うように首を激しく振るが、耳を塞ぐことの叶わないこの状況でそれは無意味な行為でしかなかった。
「子供に人類存亡の重責を託し、おのれはその間、一体何を成した?」
きつくなる臓器への圧迫と、容赦なく浴びせられる言葉に、男の肉体と精神は次第に追い詰められていった。
込み上げる吐瀉物が気管を塞ぎ、一瞬呼吸がせき止められる。
「やめ…っ、か…はっ」
間歇的に身体を戦慄かせ、額には汗、目尻には涙が浮かぶ。循環を塞き止められたため、廻る事のなくなった血潮が、頭部を土気色へと変色させている。
混濁した意識の中、しかしその退路を塞がんとする罪の意識が男を現世に縛り付けていた。
数多の触手は、自らが奪ってきた人間たちの怨嗟を伴った腕のようであり、やがて残してきた部下やこれから訪れる運命に晒されるであろう村人たちのそれとも重なってゆく。
そのひとつが、空気すら受け入れ得なくなった口腔への侵入を果たすと、そのまま反らされた喉奥を突いた。
「う…ごっ」
一際激しく身体が引攣れる。その瞬間、男は気付いてしまった。
絶望と罪への呵責から力を失う己の身体で、唯一勢いを増している器官があるということに。
下腹部の着衣を押し上げたそれは、仰け反った体勢も相まって、目の前の老人にもその状況を悟らせるに十分すぎる程に兆していた。
受け入れがたい現実を覆い隠す力も否定する声さえも奪われた男には、ただただ浅ましい姿を晒すことしか許されてはいない。
そして、そんな状況にすらも愉悦を見出すかのように主張を続ける己の身の一部。
これほどの責め苦がこの先あるのだろうか?恥辱と絶望に彩られた男の淡い瞳には既に暗く濁り、光ひとつ見てとることは出来なくなっていた。
そして、その身体も生命活動の根幹をせき止められた影響から、じわりじわりと弛緩し始める。許される終焉の時を間近に感じた男は、その事実にようやく安堵を見出し始めていたが…。

「…つまらぬ」

ただの一言で、すべてが霧散した。男を締め付ける異形の存在も、甘美な死という逃げ道も掻き消えていた。
そうして、老人は現われた時と同様に、唐突に男の前から姿を消したのだった。
一人取り残された男は、緩慢な動作で身を起こすと、その場に崩れ落ち、嘔吐いた。
吐き出されるものは苦い酸ばかりで、少なからず内部から男の身を削ってゆく。このまま喉奥から溶けてなくなればいいと、男は身を屈めながら強く念じた。
しかし、彼は知っている。人の肉体の強靭さを。かつて信じたその希望が、今の己には絶望でしかないことを押し寄せる諦念の中に否応なく刻みつけられていた。
いつの間にか、熱情は消え去っていたが、そのことに気付く余裕など残されてはおらず、再び閉ざされた世界からは一頻り男のくぐもった嗚咽のみが響いていた。


――この閉鎖された空間に外部からの風穴が開けられるには、今少しの時間を要する。





人様の発言からうっかり妄想してしまったもの。勝手に拝借してしまい申し訳ございませんでした。
鉄板アイテムを残念に練成するのは当ブログの仕様でございます。あと、ドクターは真理見たものが人柱確定って事実は知らないんだっけかなどうだったかなと思ったけれどえいやっと投下してしまいました。重ね重ねすみません。


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余談。

「でさ、石を作るためにどれだけの人間を犠牲にしたって責めたらさ、ものすっごい傷ついた眼しちゃってさ」
「ふむ」
「もーそれが、可愛いのなんのって。そんでさー、もっと苛めてやったら、いっそ殺してくれって懇願するの。もうあの姿見たらマジで興奮しちゃってさ。いっそのこと食べてしまいたいって思ったね。ほら、いろんな意味で」
「…ほう!」


そんな息子との会話が切っ掛けでドクターにちょっかい出したお父様とかいうオチで。ごめんなさいごめんなさい。

 

 
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