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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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書きかけの小話を仕上げてみるテスト。
振りの山さんとタケです。脈絡のないのはそういうことで。
 

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久しぶりにまともに顔をあわせた後輩は、ひどく憔悴しているように見えた。
三年が引退した後、主将として部を支えているのだから無理もない。
噂によると同じ二年でエースの準太が、夏以来腑抜けて部に顔を出さないらしく、そのせいで一層この状況を助長しているのだろうことは容易に想像できた。
責任感の強い彼は、きっと一人で背負い込んでいるに違いないのだ。
「タケ。しんどかったらおれの胸貸してあげようか?」
ふとよぎった不安をいつもの軽口に紛らせて投げ掛けてみる。
すると、後輩の普段めったに変わらることのない表情が目の前でくしゃりと歪んで、不意に肩に重みがのしかかって来た。
それが押し付けられた額だと気付いた瞬間驚愕し、やがてじんわりと温かい気持ちが湧き上がってくる。
「お前は何でも頑張りすぎるんだよ。たまにはちゃんと息抜きしなきゃ」
「でも、カズさんだったら…」
もっと上手くやれたでしょうと、くぐもった声が言外に伝えた。
いつもは見上げる位置にあるものが、今は顔のすぐ横にある。
普段から理知的で沈着にチームの主軸をこなす彼の、こんな風に本音を告げる姿は今までに皆無に等しかった。
「前と同じでなくていいんだよ。お前にはお前にしかできないことがあるんだから」
短く刈られた頭をゆっくりと撫でる。
大人しくされるがままになっているのは、きっと好意のしるしだと都合よく解釈してみたりして。
そうしながら、彼をこんなに苦しめる準太には今度出会ったら制裁だと心ひそかに誓った。

ややして、肩から重みと温もりが離れて行く。
「もう大丈夫です。すみませんでした」
律儀に頭を下げるのを、手で制する。
「そんなの気にしなくていいよ。むしろおれ的にはいつでも歓迎だから」
そういって両手を広げて胸を張ってみたけれども、真面目な後輩は首を横に振った。
「いえ、いつまでも頼っていられないですから」
頼られたことなんて全くといっていいほど思いつかないのに。
それよりも、言外に示唆された相手と自分を隔てる一年という時間の壁を嫌というほど思い知らされてしまう。
野球部を引退して、この春卒業するおれたち三年と新主将として部を引っ張ってゆくことになる彼と。
だからこそ、余計に一人で背負い込もうとしているのだろう。
そして遠くない未来、ここを去るおれがそんな彼に一体何が出来るというのだろうか。
中途半端な優しさは単なる我執にでしかない。
けれども。
少しはお前の支えになりたいと、そう願うことだけは許されたいと。他ならぬ彼にだけはと切に願う。
見上げると、晴れやかに笑う後輩の姿がある。
ありがとうございますと、そう言った顔にもう迷いはなくて、寂しいような頼もしいような複雑な気持ちになった。
拍子抜けしたおれの様子に気付いたのか、相手は少し照れくさそうに目をそらし、それから「山さんがいてくれて本当に良かった」とぽつりと小さく洩らした。
瞬間、一気に浮上するわが身の現金さといったらもう。
見上げる位置にある頭だとか、一年の年の差だとかそんなもの、彼の一言がどこかに吹き飛ばしてしまって、おれはめいっぱい腕を伸ばして相手の顔をこちらに向ける。
「タケ、お前は天才だよ。おれを幸せにする天才」
「何なんですか、その微妙な才能!」
言い返しつつもやはり抵抗はなくて、そんな事実に感動といとしさを覚えた。
こんなきっかけをくれた準太にはあとでジュースでも奢ってやろうと。それからいつまでも腑抜けているなとカズにけしかけてもらおう。準太が部活に出れば、タケの負担も減って一石二鳥だろうとか。
いろいろな計画が頭を駆け抜けたけれども、それはひとまず置いといて…。
「光栄なことだよ、おれが大好きって言ってるんだから」
「…っ!」
赤面しい言葉を詰まらせる後輩の、そんな可愛い反応を堪能しながら、遠いと思っていた距離を一気に飛び越える。
不安定な足元はもう気にならなかった。


今年の春に他所様で見かけて俄かに山タケいいじゃないかと思い、勢いで書き始めたものです。
ちなみに4月7日の日付だった…。
オチに困って放置していたのですが、やはりオチに困ったのがありありと分かる仕上がりになっています…orz。

 

 
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