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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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先日垂れ流していた夏祭り妄想のリベンジ。
一応ごうえんじくん視点のつもり…と、書かなければ分からない体たらくぶり。
相変わらず乾いた内容ですが、心意気だけ豪染だと言い張ってみるテスト。

そんなゆるい小話ですが、お付き合いいただけるのでしたらば追記からどうぞです。

 

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作戦会議と称する寄り道の最中、商店街で夏祭りのポスターを見付けた。
以前は妹の夕香と二人で出掛けたものだが、その最愛の妹が傍らにいない昨年は、祭りに行くなどという思考にすら行き着くことはなかった。
そのときの自分は、茫洋とした靄の中に沈んでいるようだった。生きながらに死んでいるといっても過言ではなかっただろう。
そう、かけがえのない出会いを果たし、再びピッチに立つことを決意するまでは。
「もうすぐ夏祭りなんだよなぁ」
視線の先にあるものに気付いたのか、円堂が声を上げる。
「そういえば、二人ともこっちの祭りってまだ見たことないよな!?」
振り返った円堂の目はやけに熱を帯びて輝いており、経験則から彼が何かしらの思いつきをしたのだということを悟った。
隣では同じ結論に至ったのであろう鬼道が此方を見て僅かに肩をすくめる。
「よし、決めた!今週の土曜日は練習を早めに上がって、皆で稲妻祭りに行こう!」
往来で拳を振り上げながら繰り出されたキャプテンの提案は、翌日、全員一致で可決されることになる。

この町では初めての祭りだったのだが、その規模といい雰囲気といい、以前に過ごした町とそれ程変らないという印象を持った。
ただ、妹と二人きりで過ごした今までとはうって変わって、大所帯で過ごす祭りの夜は新鮮であり、またこんな騒がしさも悪くないと思う。
「こら、お前らさっきから水物食い過ぎだろ!」
声の方に目をやると、染岡が一年たちに怒声を飛ばしていた。
彼の視線の先では後輩たちが、めいめいに色とりどりのかき氷をほお張っている。
「今日はお祭りなんだから特別っすよ、ト・ク・ベ・ツ」
「そうそう、お袋みたいなこと言わないで、先輩もどーです?」
差し出される苺のカキ氷を頭を振って断った染岡は、仕方ないとばかりにため息をついた。
「いいか、てめーら。腹壊して次の試合出られなくなったら、承知しねーからな!」
彼の長身を包む渋皮色の浴衣がいつもと違って落ち着いた雰囲気を醸し出しており、そうやって後輩たちに言い聞かせている光景は、まるで親子のようで微笑ましい。
胸に沸き起こる感情は、決して穏やかなものだけではなかったが。
程なくして花火の打ち上げを開始するというアナウンスが流れると、急に周囲が慌ただしくなり始める。
行動を共にしていたチームメイトたちも例外ではなく、皆いっせいに花火の会場である広場へと駆け出していた。
一方の我が身はというと、予想を上回る急激な人の動きに不覚にも反応が遅れてしまっていた。
大挙として押し寄せてくる人波に飲まれそうになり、咄嗟に傍らにある腕を掴む。
その行為は急流の中で藁にも縋るような、そんな一種の防衛本能に過ぎないものだった。その時は。
次の瞬間振り向けられる顔、その目が此方を捕らえて見開かれた――腕の持ち主は染岡だった。

喧騒が止んだ…気がした。
すぐ側を大勢の人間がすり抜けているはずなのに、足音も、人の気配すらも己の脳に届くことは無く、手のひらを伝わる体温だけが、己の感覚のすべてであるかのような錯覚に陥る。
それは、時間にすると僅かなものだったのだろう。しかし、他のメンバーに追い付くのは不可能な程に出遅れたようだ。
もっとも、彼を強く意識してしまった今、そんな気は全く起こらなかったが。
「…あーあー、完璧にはぐれちまったじゃね―か」
口ぶりとは裏腹に咎める様子のない声音に安堵する。
「今から追いかけても、合流は無理だろうしな…」
小さな呟きは、まるで自らに言い聞かせるかのようで、そうしてしばし考え込むような表情を見せた染岡は、直後にくるりと踵を返す。そんな彼の様子を惚けたように目で追ってしまった。
「こっち、特等席があんだよ」

導かれるままに斜面を登り、たどり着いたのは町外れの高台だった。
浴衣じゃ木に登れないと頭を抱えるのを、これで十分だとなだめる。
頭上に被さる木々の間から垣間見える花火は、それでも綺麗だったし、傍らに彼がいることこそが自分にとっては何よりもかけがえのないことだったからだ。
「ありがとう」
素直に沸き上がる気持ちを告げると、おう…と歯切れの悪い応答が返ってくる。
背けられた顔で表情は分からなかったが、彼の耳を彩る朱に、つい口元が綻んでしまう。
その時不意に蘇ったのは、件の作戦会議前の部活での出来事だった。
いつに無く落ち着かない様子の染岡を怪訝に思い、訳を尋ねようとした所で円堂につかまったのだが…。あの時彼が伝えようとしたのは、今日のこの時のことではなかっただろうか?
だとしたら、望み望まれるこの関係に、無上の幸福を感じる。
「染岡…」
名を呼んで、一歩距離をつめる。
縫い止められたように動かない身体に、そっと手をさしのべた。

「豪炎寺先輩!染岡先輩!」
突然、鈴を転がすような軽やかな声が辺りに響いた。
夜目にも映える白地に鮮やかな牡丹模様の浴衣を纏った少女が、坂を上り詰めた所から手を振っている。
続いて少女に手を引かれて姿を現したのは、トレードマークのゴーグルをつけた男。
マネージャーの音無とチームメイトの鬼道の兄妹だった。
無邪気な妹の傍らで此方の状況を敏感に悟ったらしい兄が、小さく頭を下げる。
そういえば、折角縮めた染岡との距離は、一緒に並んでいるのが不自然なほどに離れてしまっていた。
「何だよ、お前らもはぐれたのかよ!?」
「だって急に皆走り出しちゃうんですもん。お兄ちゃんが見つけてくれなかったら、完全に一人ぼっちになってたとこですよー」
染岡と音無。何となく珍しい取り合わせだと思いつつ、少し離れた位置から二人の会話を聞いていると、いつの間にか近くまで来ていた鬼道が、此方にだけ届く程度の声音でぼそりと呟いた。
「すまん、邪魔したな」
浴衣姿でもゴーグルとドレッドヘアを貫く(さすがにマントはしていなかったが)どこまでも律儀なチームメイトに、苦笑交じりに「お互い様だ」と返した。
続く沈黙の間に、自然と目線は頭上を彩る大輪の花から、地上の大切な存在へと向けられる。
「ここは良いところだな」
再び鬼道が口を開いた。
景観の事を指していないことはすぐに分かった。声を発した相手の視線は、自分と同じく花火に興じる二人へと注がれていた。
「…来年もまた、こうしていられたらと、そう願ってしまうんだ」
自嘲するかのように吐き出される言葉は、おそらく彼が当たり前に続く日常を永遠のものだとは信じていないからだろう。
それは、突然妹との時間を奪われた自分自身にも通じる。だから、諦観しながらもなお、不確かな未来を望む相手の思いの丈を推し測ることが出来た。
「その意見には同感だが、それは音無に言うべきじゃないか?」
「そうだな」
口元に笑みを刷いた鬼道の目は分厚いレンズに阻まれて視認することは出来なかったが、きっと今の自分と同じだろうと確信できた。
少し離れた場所に立ち、夢中で空を見上げるふたりは、此方の視線に気付いていない。
永遠なんていう幻想に縋りたいとは思わないが、一年先の約束を取り付けるくらいなら許されるだろうか?
この空を彩る花はあっけなく消えてしまうが、また次の年も同じ場所で咲くに違いないのだから。
染岡は、花火の一瞬のまばゆさを目に刻み付けるかのように熱心に宙を凝視し続けている。
そんな彼のもとに、歩を進めた。
今しがた思ったことを伝えたらどんな顔をするだろうかと思いえがきながら。



本当に心意気だけでした…orz
あの兄妹が出てくるのは仕様です。別にはぐらかしてる訳じゃないんだからね!
段々フェンス手前が持ち味のような気がしてくるけれども、気のせいだと思いたいです。

 

 
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