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日々の萌えと燃えを吐き出す文字どおり世迷言ブログ
 

 

 
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書きかけの小話を仕上げてみるテストそのに。
鋼のスカマルです。いやCP要素あるのかも定かでないですが、心意気だけはそのつもりで…。
 

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最近頓に腰痛が酷くなったというのを、確かに誰かに洩らした気はするが――。

理由を告げられずに連れ出され、気付けば導かれるまま険しい山道を歩く羽目になっていた。
否、道というのも抵抗のあるそこは、岩と砂に覆われた荒涼とした傾斜地といったほうがしっくりくる。
前方には険しい岩がそそりたち、樹木はおろか草花でさえまばらである。
先を行く彼は、そんな状況にも慣れているのだろう。恐ろしく悪い足場を苦にする様子も無く進んでゆく。
しかし、振り向かずとも此方の気配を察知してくれているようで、段差の激しい場所などは何も言わないでも、手を引き上げてくれた。
それでも、ただでさえ健康とは言い難い老体に、この強行軍は厳しいものがあったのだが。
闇雲に彼がこの険しい道を歩む訳ではないことは十分に承知していたので、悲鳴を上げる身体を無視して黙って付いてゆく。

目の前に立ち塞がる岩壁がなくなったかと思えば、いつの間にか周囲は薄闇に包まれていた。
登り始めたのが日の高い時分だったことを考えると、もうかれこれ半日近くは歩き続けたことになる。
開けた場所に視線を移すと、岩場がくりぬかれた様に椀状になっており、中には水が豊かに満たされていた。
「こんなところに池が…?」
思わず声を上げると、すぐに否というこたえが返ってきた。
そういえば、あたり一帯が不自然に白く曇って見えることに気付く。
更に近づくと、水と思われたそれから、もうもうと湯気が立ち込めていることが分かった。
「ここは、武僧の湯治場だった」
説明しながら、彼は水辺まで歩み寄り、腰をかがめて手を浸す。
それに倣うと、成るほど水と思われたそれは温かく、そして少しぬめりを帯びていた。
そしてようやく、彼がここに導いた意図に気付き、そのやさしさに心が暖められてゆくのを感じた。

---

湯に身体を浸し手足を伸ばす。
全身を包み込む柔らかな感触が心地よい。
見上げると、下弦の月が岩肌をほのかに照らしていた。
切り立った岩に囲まれたそこは、まさに天然の景勝地だった。
「かつてさる高僧がここで傷ついた身体を癒したと言い伝えられている」
以来、修行に疲れた武僧たちが癒しを求めて訪れたのだという。
「尤も、今となっては足を踏み入れる者は居ないのだが」
そう結ぶ相手に、この心地好さを一人占めするのが忍びなく、君は入らないのかと声をかけたが、すげなく断られてしまった。
「多分、地下水が地熱で温められたんだろうね。そして、ここの鉱物が水に溶け出して、それが色々な薬効になっている。組成が解れば人の手で錬成することは可能だけれども、この景色までは絶対に真似できないだろうね」
人は錬金術によってあらゆる不可能を成し遂げてきた。それが発展だと信じて疑わなかったのだが。
自然は、時として人の想像を遥かに凌駕したものを作り出す。
このような秘境の地に、癒しの場を提供するように。
「君達の神様の言わんとしていることが少しわかった気がするよ」
この国の人間が忘れかけた、理屈を超えた荘厳な美がそこにはあった。
厳しい自然と向かい合ってきた彼らだからこそ、知りえた真理なのだろう。

少し離れた岩場で瞑目する彼をそっと見つめる。
月明かりが彫りの深い相貌を見事な陰影で浮かび上がらせていた。
黙して語らない彼のことをもっと知りたいと思った。
かの民のこと、家族のこと、そして彼の名と。
贖罪からではなく、純粋に唯只管に知りたいと。

未来を楽観する気持ちは無いけれども、もし全てが終わったそのときには…。
「教えてはくれないだろうか?」
小さな呟きは、やわらかな湯の中に潜って消えていった。



温泉ネタがやりたくて書き始めたもの。
温泉だったらもっとこうさぁ!っていうのを敢えて外してみたかった。
据え膳って食わないほうが迸りませんか?…って、単にへたれなだけです。すみません。
ちなみにこれは、今年の6月頃のものでした。

 

 
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